茨城県「不法就労通報報奨金」導入と事業主のリスク対策の関係―行政書士が解説する制度の本質

不法就労通報報奨金制度とは?事業主が知るべき法的リスクと対策

1. なぜ茨城県が「独自」の施策に踏み切ったのか

茨城県が本年(令和8年)4月から導入を予定している「不法就労通報報奨金制度」が報じられています。
背景にあるのは、茨城県内の不法就労を巡る深刻な現状です。
※ 記事1記事2(リンク)

  • 全国最多の摘発数: 茨城県は不法就労外国人の数が3年連続で全国最多(2024年は3,452人)となっています。
  • 自治体の危機感: 農業などの基幹産業における不法雇用の常態化の防止、「ルールを守る雇用環境」の県主導など。

2. 制度に対する主な批判と懸念

この制度に対し、一部の識者や人権団体からは以下のような懸念が示されています。

  • 偏見・差別の助長: 外国人に対する監視の目を向けることで、分断を生むのではないか。
  • 自治体の役割: 捜査権限を持たない自治体が、市民による「監視」を奨励することへの違和感。
  • 「通報=金銭」のイメージ: 報奨金が強調されることで誤ったイメージとならないか。

3. 法的視点:実は「目新しい仕組み」ではない

実務家の視点で法律を紐解くと、この仕組みは決して突飛なものではありません。

  • 入管法に古くから存在する規定: 入管法第62条には「何人も通報できる」旨が定められている。
    さらに第66条では、通報により退去強制令書が発付された場合、報奨金を支払うことができることが明記されています。
    私としては、入管法を読み調べていた25年前にはすでに知っていた規定であり、実務として入管法に触れている者にとっては既知の事実ではないかなとも思っています。
  • 通報先の違い: 国の制度は「入管」への通報ですが、今回の県の制度は「警察(県警)」の摘発に繋げるための窓口を県が設けるという点に違いがあります。
  • 事業者の義務と不法就労助長罪: そもそも入管法第73条の2(不法就労助長罪)により、事業主には「不法就労をさせてはならない」という厳格な義務があります。
    雇用時に在留カードの確認を怠るなどの過失があれば、事業主自身が処罰の対象となり得るのです。
    ※不法就労助長罪とは(note記事リンク)

4. まとめ:制度の本質を冷静に捉える

今回の茨城県の対応は、私見として述べれば、「既存の入管法の運用を、地域の実情に合わせて実効性を高めようとする試み」であり、法制度の枠組みを大きく逸脱するものではないと考えられます。

外国人が日本の法に従って適正に労働を行うことは、共生社会において極めて健全な姿です。
この制度は、適正に働く外国人を排除するものではなく、むしろ不法な雇用から外国人を守り、地域の雇用秩序を正常化するためのものです。

また、「監視を奨励」するものとも考えにくく、現在、法律において事業主が本来負っている「本人確認義務」や「不法就労防止の責任」という法令順守を再確認するものととらえるのが妥当な解釈ではないでしょうか。
長く、国として入管への通報及び報奨金制度が存在し続けている事実もあり、今回、通報先を県(警察関連)として新たな運用が始まることをもって、直ちに社会的な問題に直結するとは考えにくいのではないでしょうか。
行政書士として感情的な議論に流されることなく、外国人雇用に伴う法的リスク、とりわけ不法就労助長罪の問題について冷静に整理し、事業者の皆様が入管法に基づいた適法な対応を取れるよう支援することが大切だと考えております。

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※出入国管理及び難民認定法(抜粋)
第62条第1項 何人も、第24条(退去強制)各号(オーバーステイ等)のいずれかに該当すると思料する外国人を知つたときは、その旨を通報することができる。
第66条 第62条第1項の規定による通報をした者がある場合において、その通報に基いて退去強制令書が発付されたときは、法務大臣は、法務省令で定めるところにより、その通報者に対し、5万円以下の金額を報償金として交付することができる。但し、通報が国又は地方公共団体の職員がその職務の遂行に伴い知り得た事実に基くものであるときは、この限りでない。
 (不法就労助長罪とは)
第73条の2 次の各号のいずれかに該当する者は、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者
二 外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者
三 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせんした者